1か月前にも報道はありましたが、北京五輪柔道100kg超級金メダリストの石井慧選手のプロ総合格闘技転向が正式に発表されました。
その記者会見の中で、「60億分の1の男になりたい」という言葉がありましたが、「60億分の1」はPRIDEファンにとっては、最強を示す言葉。
石井慧選手の総合格闘技にかける思いや人類最強を目指す強い意欲が伝わってきます。
そんな石井慧選手にもコーチがついていました。
コーチと言っても競技面でのコーチはもちろんですが、メンタル面でのコーチです。
このコーチは平本あきおコーチ。
これまで、30回以上のセッションで、石井慧選手を精神面からサポートしてきました。
その中で、こんな話があります。
以下は日経ビジネスから平本あきおコーチの記事の抜粋です。
『コーチングセッションの中で、石井選手に自分らしい柔道について聞くと、「いつも自分の中に3人の自分がいる」と答えたんですね。
1人目は、「自分らしい自分」。この状態の自分は、試合にも常に勝てている状態だったそうです。ところが、時々「飼い犬の自分」と「女々しい自分」が出てきてしまうというのです。「飼い犬の自分」の時は、精神的にどうしようもなく弱気になってしまう。「女々しい自分」に入っている時には、戦略を練りすぎてしまって、雑念が入りすぎて集中できないと悩んでいました。
では、どうしたか。石井選手には、それぞれの自分になりきってもらいました。そして、どんな心情なのかを、演じてもらったんですね。たとえば、「飼い犬の自分」なら「ああ、おれはいつもダメだなあ」とかね。そうやって心情を吐露していくうちに、自分を客観的に見ることができるようになりました。
すると、石井選手はこう言いました。「これ、全部自分自身のことです。自分らしい自分も、女々しい自分も、飼い犬の自分も自分だ」。
そして、2人の弱い自分を、石井選手自身がこう考えるようなりました。「女々しい自分ってもしかしたら、戦略を練って相手を研究している自分だから、『したたかな自分』なのではないか。「飼い犬の自分」だって、弱気の状態でも、どんなことがあっても耐える『辛抱強い自分』だ!」。
そうやって、自分の内面を見つめなおしてもらうと、石井選手は「これ、全部大事だ」というんですね。どれも自分であり、自分軸の「勝つ」ためには必要だと。ネガティブな自分は、消えていました。
すると、石井選手の試合が見違えるように変わりました。伸び伸びと柔道をするようになったんですね。例えば、辛抱強い自分の時は、耐えて耐えて最後に逆転する戦い方ができる自分になりました。スタミナ自慢の石井選手は、試合開始後3分を過ぎたあたりから実力を発揮するのが強みです。3分過ぎからの時間帯を「石井ちゃんタイム」と呼んで戦えるようになったのは、精神面での変化が大きかったのかも知れません。』
自分を客観視するのは難しいことですが、コーチングにより自分の内面に問い掛け、自分自身を見つめなおす。それにより、新たな自分を発見する。
自分を強くする秘訣、コーチングにありですね。
2008/11/04自己の内面を感じる、受容する